自動化のエキスパートSCHUNKは3爪グリッパーEZUで電動グリッパーのポートフォリオを拡充しました。その背景には、急を要していたという明確で極めて現実的な理由があったのです。「私たち解決しなければならない困難なハンドリング課題を抱えていました」と、WEKAL社設計チームPeter Liebal氏は語ります。「そのとき、SCHUNKが特注の電動グリッパーを提供してくれたのです」。機械エンジニアリング事業を展開する同社には、工場内のローディング、搬送、供給といった工程をこなすさまざまなロボットセルがありました。同社の顧客であるとある有名自動車会社は、自動化によるプロセス改善を図るため、既存の生産ラインにこれらのセルを段階的に導入しています。「この自動車会社とは長い付き合いで、既にいくつかのラインモジュールを供給しています」とLiebal氏は説明します。「私たちの信頼性と品質は、この会社では広く認知されています」。
顧客専用の供給・ロボットソリューション製造を専門とするWEKAL社ですが、設計チームはリンクセル内での複雑なハンドリング作業で課題を抱えることになりました。このセルでは、素材段階のアクスルドライブホイールがブリスタースタックを介してロボットへ供給されています。自動でブリスター層からブランク材をピックアップし、連結システムへ送り込みます。ライン上の後続処理ステーションには、洗浄システム、バリ取りステーション、セレーション加工用フライス盤などがあります。「このセルにおけるハンドリングの課題には、いくつかの側面があります」と、設計責任者のLiebal氏は説明します。「重さ約6kgの電気モーター用アクスルドライブホイールの表面は、非常に滑らかです。そのため、ここでは高い把持力が必要となるのです。もう一つの課題はコンポーネントの『位置ずれ』問題です」とLiebalは語ります。「アクスルドライブホールがブリスターグリッド内で常に正確に中心位置にあるとは限らず、ある程度の位置ずれが生じる可能性があります。たとえば、さまざまなプロセスステーション間の移動や周囲の振動により、コンポーネントがブリスター金型内で滑ることがあります」。「このわずかに偏心した位置に加えて、積み重ねられたブリスターは自重で曲がり、コンポーネントがブリスターグリッドの中でわずかに傾くのです」。グリッパーは水平方向の変位を補正することでこの特殊な位置を克服し、引き続きアクスルホイールを安全かつ確実にハンドリングできます。「EZUは、コンポーネントの水平方向の変位と把持の際のわずかな傾きの両方を補正することができます。これがこのグリッパーの特長です」とLiebal氏。
この課題解決に向けて、WEKAL社設計チームは他社の製品もテストしましたが、様々なソリューションを試したにも関わらず、グリッパーが作業途中でワークを失うという問題が発生しました。「私たちにとってSCHUNKがグリッピング技術の理想のパートナーであることが、このことによって改めて証明されました」と語ります。彼のチームは、ラインの別の場所に設置されているEGU電動2爪グリッパーにすでに慣れ親しんでいました。「私たちは、(EGUを) をとても気に入っていました」とLiebal氏は明言します。これを受けて、SCHUNK設計チームはこの特殊なハンドリング課題に対応する3爪モジュールの開発が必要と判断しました。「そして、SCHUNKは見事にソリューションを提供してくれました」とLiebal氏は言います。「SCHUNKは、私たちのニーズに合わせて電動3爪グリッパーを最短で提供するため、あらゆる手を尽くしてくれました。コンパクト設計で高パワー密度という、このプロセスにまさに求められていた仕様です』
サプライヤーが顧客の要求にこれほど迅速に応えてくれることは決して当然ではない、とチームリーダーは強調しています。「新しく開発されたSCHUNKのEZUは、私たちの要件にぴったりでした。他のユーザーの、このグリッパーの特長をきっと気に入ることでしょう」WEKAL社でロボット・プログラミング担当のChristian Glatzer氏も同じ見解を示します。「EGUとEZUの相乗効果は私たちにとって極めて有用です」とGlatzer氏。「共通のインターフェースと同一ソフトウェアプラットフォームにより、すべてが大幅に簡素化されます。スムーズな稼働、プラグ&プレイによる柔軟な切替え。この使い勝手の良さで、多くの時間を節約できるのです。」
内蔵の絶対位置測定システムがワークの直径を検出し、非常停止や停電の場合でも常に基準位置を保持します。「もう一つのメリットは、グリッパーに統合されたPROFINET通信インターフェースです。追加のゲートウェイも不要で、コントロールシステムのネットワークに接続をシームレスに統合できます。これは、最終的にシステムを操作することになるお客様にとっても非常に便利です」とGlatzer氏は説明します。EZUの高い把持力も非常に印象的です。「SCHUNKは再グリップ機能において素晴らしい仕事をしてくれました」とGlatzer氏は強調します。スパーギアは、最小アプローチ距離なしでも特に信頼性の高い把持力を発生させます。恒久的な再グリップ機能が、最大限のプロセス信頼性を保証し、毎日の生産時に発生する位置決めの不正確さを補正します。通常のBasicGripモードに加え、StrongGripモードでは把持力を最大200%まで高め、さらにパワフルな把持プロセスを実現します。これにより、WEKAL社はグリッパーを交換する必要がなく、さらに重いワークをハンドリングできるようになります。EGUと同様、EZUもワークの紛失を検出する把持力維持機能を内蔵しています。
電動グリッパーのラインアップ拡充を通じて、SCHUNK社は各所で進展する電動化の流れをサポートしています。これはWEKAL社の顧客が目指していることとも合致します。「ターンキーの搬送セルを自動車メーカーの製造ラインに統合する場合でも、メーカー側はどのコンポーネントが組み込まれているか常に把握しておく必要があります。電気自動車のモーターを製造する際は、電気モジュールも搭載する必要がありました」とPeter Liebal氏。「お客様は、EZUを使ったこのソリューションに大満足でした」。すでに4台の自動化セルが納入されています。そして、これからもさらに多くのセルが納入される予定です – そのなかには、EGUとEZUの協働が生む相乗効果でハンドリングプロセスの効率化を実現するセルも含まれます。
SCHUNKは3種類のサイズのEZUを提供したことで、WEKAL社はアプリケーションに応じた全ての回転対称ワークを把持できるようになりました。「SCHUNKは長年にわたり、プロ仕様のグリッピング技術の確立されたサプライヤーであるため、当社の多くのガントリーソリューションやロボットセルに、様々な種類のSCHUNK製グリッピングテクノロジーを導入してきました」とPeter Liebal氏。「しかし、このソリューションには特に感銘を受けました。この問題に対し個別にアプローチし緊密に連携することで、共同での議論を通じて最適な目標を達成することができました。」